ハニー社長の学びと気づき

2026.06.08

「人手不足」の正体は、雇用の設計ミスだった。

 

「人が来ない」「すぐ辞める」そんな嘆きを、経営者仲間から聞かない日はない。
だが私はいつも、こう問い返したくなる。
そもそも、その雇い方でよかったのか? と。

半世紀で世界は変わった。でも雇用だけ変わっていない。

日本はこの50年で、驚くほどグローバル化した。
輸出入の構造も、物流も、決済も、情報も、国境を意識しない時代になった。
ところが中小企業の雇用だけは、半世紀前とほぼ変わっていない。
「一人採ったら、なんでもやってもらう」。
これが今も当たり前の感覚として根付いている。

背景には法制度の違いもある。
日本は終身雇用を前提とした労働法制、アメリカは随時解雇が可能なアット・ウィル契約。
そのベースが違う以上、単純比較はできない。
しかしそれを差し引いても、もう少し変えられるのではないかと私は思う。


ホテルのドアマンはなぜ、荷物を運ばないのか。

海外のホテルに着くと、車のドアを開けてくれるスタッフがいる。
彼は荷物を部屋まで運ばない。
スーパーの駐車場で、放置されたカートを集めるスタッフがいる。
彼は店内接客をしない。
これが分業制、いわゆるスペシャリスト型雇用の姿だ。

日本の経営者の本音はこうだ。
「一人雇ったからには、できる限りたくさんの仕事をやってほしい」。
それはそうだ。私も経営者だからよくわかる。
しかし人には向き不向きがある。
苦手なことを押しつけられた人材は、やがて疲弊し、辞めていく。

かつて私は、3ヶ月で約700万円を投じて4名を採用した。
ところがその後3ヶ月で2名が退職した。
あのとき私が問い直せていなかったのは、採用の数ではなく、雇用の設計そのものだった。


「その仕事だけやってくれればいい」は、今なら実現できる。

「この仕事だけお願いしたい。でもフルタイムで雇う余裕はない」そういう経営者の本音に、今の時代はようやく応えられる環境が整いつつある。

スポットバイト等のマッチングサービスは急速に普及し、必要なときに必要なスキルを持つ人材を呼べる時代になった。
そして何より、生成AIとAIエージェントが実務で使えるレベルになってきた

マーケティング分析、提案書作成、SNS発信、議事録・マニュアル作成、スプレッドシート編集、経費の自動仕訳、API連携による業務短縮、挙げればキリがない。
かつては「人を増やすしかない」と思っていた仕事の多くが、今はAIが担える


利益構造を疑わずに、雇用を嘆くな。

大手企業の新卒初任給が40万円に迫るこの時代、地方の中小企業が同じ土俵で戦えるはずがない。
それでも雇うなら28万円前後は必要だ。
しかし労働分配率を考えると、その水準で「なんでもできるゼネラリスト」を求めるのは、もはや現実的ではない。

ならば発想を転換すべきだ。
その人件費負担に耐えられない利益構造なら、構造そのものを見直す
AIやIT活用を前提とした業務設計に変える。
スペシャリスト型のスポット採用も組み合わせる。
それが、地方の中小企業が生き残るための、新しい雇用の形ではないか。


「人手不足」という言葉の裏に、本当の問題が隠れていることがある。
それは人がいないのではなく、旧態依然とした雇用の設計を疑えていないことだ。

あなたの会社の「雇い方」は、この半世紀で一度でも見直されただろうか。


著者:埴岡雅則
IT導入診断士 / DX学校神戸校講師
35年の経営経験をもとに、中小企業経営者へ生成AI活用と身の丈ニッチ戦略を伝えます。

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